プラントモニタ用バイオセンサの開発研究
この地域には、とあるバイオマスガス発電プラントがあります。バイオマスで発電と言えば、ちょっと大きさと形を揃える程度の加工のあとで燃やして発電、という手法がよく知られています。ですが、バイオマスを微生物でメタン発酵させて、出てきたメタンガスを燃やして発電する、という手法もあります。食品工場の排水や洗浄液のような、有機物を大量に含んでいるけどそれ以上に水分量が多い、というバイオマス処理に有効な手法です。そんなバイオマスガス発電の中でもメタン発生量が世界トップクラス、という輝かしい成績を誇るプラントさんです。そのプラントでは、ある成分濃度が重要なのだそうです。企業秘密なのでとりあえず有機物Aって呼びますね。できればずっとモニタリングしたいのだけど、そんなセンサはない。しょうがないのでときどき少し遠いグループ企業までサンプルを持って行って測定しています。これをもっと頻繁に測定したい。でも分析だけのためにスキルの高い人材を常駐させるコストはかけたくない。機械任せにしたいけど、ちょっとの作業ならぎりぎりOK。簡単に測れるセンサを欲しい、というご要望でした。
バイオセンサは、簡便・低コストな測定のための分析手法として知られています。高価な機器分析は前処理の手間と、そのスキルを持った人材が必要。中程度の価格帯となる酵素測定キットも、生化学分析の専門学校を卒業している程度のスキルは必要で、それなりに手間がかかる。結局特殊スキルの人材が必要。しかも酵素や試薬や多くの器具は使い捨て。バイオセンサは酵素を固定化して使いまわすので、酵素などの消耗品費用を抑制し、使い勝手をよくしてあるので、現場作業員が片手間で測定できる、というのを期待して開発を進めています。
ただ有機物Aはバイオセンサの測定対象としては特殊で、開発例がないわけじゃないけどあまりありません。数少ない報告例も、微妙な問題を抱えています。しかも今回のプラントの試料は、この論文方式だと原理的に絶対にそのままでは測定できない、というやっかいな問題をはらんでいます。このあたりを、手間を増やす過ぎずにぎりぎりなんとかする、という落としどころ探しをしながら、センサ開発を進めています。